登記簿からみる取引先信用調査

•登記簿はだれでも取れる

•登記簿を見れば、その不動産の所有者がどのような経過でその不動産を取得し、現在はどのような信用状態にあるのか、おおよその見当がつく場合がある

•登記簿は「履歴書」  不動産登記簿や会社の登記簿は、調査時点の情報だけが記載されているわけではなく、現在の状態に至る過程が刻々と記録されている。

•信用調査の目的を持って登記簿を見る場合には、「今どうなっているのか」ではなく、「どのようにして今に至っているのか」、そして、「その背景には何があるのか」を読みとることが必要。 

•会社の登記簿からは、誰が役員なのかというようなことだけではなく、役員の人事関係はうまくいっているか、遵法精神を持ち合わせた会社か、悪巧みのために急遽でっち上げられた会社なのかなどが推測できる場合がある

•インターネットの活用   遠隔地の登記情報でもインターネットを利用して閲覧できるようになっている。 これにより、登記情報をスピーディーに調査することができるようになっている。

登記情報提供サービス

•登記情報提供サービスは,不動産登記情報・地図情報・土地所在図地積測量図,地役権図面及び建物図面/各階平面図)・ 商業・法人登記情報等 をインターネットを使用してパソコンの画面上で確認できる有料サービス

※登記情報はPDFファイル

※登記情報に法的証明力はなし

※コンピュータ化後の閉鎖登記簿も閲覧可

•注意点

 ① 不動産登記情報のうち,共同担保目録等については,選択して請求する

 ② 商業・法人の登記情報は,現に効力を有する情報のほか,請求する日の3年前の日の属する年の1月1日から請求の日までの間に抹消された情報等のみ

 ③ 不動産登記情報の閉鎖登記簿は,管轄する登記所の登記事務がコンピュータ処理に移行された後に閉鎖された登記簿の情報を取得可能。商業・法人登記情報の閉鎖登記簿は,管轄する登記所の登記事務がコンピュータ処理に移行された後に登記簿全体が閉鎖されたものの情報を提供している。

※コンピュータ化前の閉鎖登記簿謄本等は,管轄する登記所に請求する。 

 ④ 不動産の登記情報の請求については,全部事項,所有者事項,地図及び各種図面を請求する場合に,請求に係る情報量が1メガバイトを超える登記情報は対象外

※商業・法人の登記情報を請求する場合には,請求に係る情報量が300キロバイトを超える登記情報は対象外。ただし,一部の登記事項区(目的区,株式・資本区,役員区等)を選択して請求することにより,請求に係る情報量が300キロバイトを超えないこととなる場合は,その情報について提供が可能    

※この場合には,管轄する登記所で登記事項証明書を取得する

  ⑤ 現在事項証明書,登記事項要約書に相当する情報はサービスの対象外。 

     利用時間

      平日 午前8時30分から午後9時まで    休止 土,日,国民の祝日及び休日,年末年始(12月29日から1月3日まで)

不動産登記簿

•不動産登記簿は土地と建物に分かれ、土地については、いわゆる住所ではなく、「地番」によって識別されている。

•不動産登記簿には「現在事項証明書」と「全部事項証明書」があるので、履歴の分かる「全部事項証明書」を取得する。

•不動産登記簿は、「表題部」と「権利部」に分かれ、「表題部」は不動産に関する表示で、不動産の概況がわかる。

「権利部」は「甲区」「乙区」で構成されている。与信管理で大切なのは「権利部」である。

•不動産登記簿を取得するときは、一緒に「共同担保目録」を取得する

  • 甲区 (所有権に関する事項)
    • 「甲区」には、所有権に関する事項が記載されている
    • 危険な兆候

     •所有権以外の権利、「差押え」、「仮差押」などの登記

     •譲渡担保による所有権移転

     •所有権移転請求権仮登記

     •信託の登記

     •保全処分の登記がある場合

     •破産の登記がされている場合

     •処分禁止の仮処分の登記がある場合

    注意する登記

    •所有権が最近他人名義に移していたりすれば要注意

    •登記原因「代物弁済」

    •「遺留分減殺」、「相続」後の「遺産分割」

    •抵当権付きのまま財産分与の登記がされている場合

    乙区  ( 所有権以外の権利、抵当権や根抵当権、質権などの「担保権」や地上権や賃借権などの「用益権」などが記載されている(主に「抵当権」))

    •乙区には所有権以外の権利、抵当権や根抵当権、質権などの「担保権」や地上権や賃借権などの「用益権」などが記載されている(主に「抵当権」)

    危険な兆候

    抵当権

    •利息制限法の上限金利での登記をしている場合

    •債務承認契約や準消費貸借契約の登記をしている場合

    •急にそんなに借りられるわけがないと思われる額について抵当権等が設定されている場合

    •保証協会による代位弁済の登記がなされている場合

    根抵当権

    •個人名で根抵当権が設定され、根抵当権の極度額が増額変更されている場合

    •根抵当権の「債権の範囲」が、「消費貸借取引 証書貸付取引 手形貸付取引 手形割引取引 保証取引 立替払委託取引 手形債権 小切手債権」などとやたらと多い場合

    •元本確定の登記が入った場合

    •やたらと仮登記が多い場合

    •最近抵当権設定、所有権移転登記請求権仮登記などの登記が付け加わっていたら要警戒

    •古い原因日付の登記を最近した場合

    •取引銀行の変更の有無(メインバンクの変更)特に規模大より小への変更

    •転抵当の登記がなされている場合

    商業登記簿

    •商業登記簿には、「現在事項証明書」と「履歴事項全部証明書」、「閉鎖事項証明書」などがある。

    •与信管理で使用するのは、「履歴事項証明書」と「閉鎖事項証明書」である。現在事項だと現在有効な事項の確認しかできず、取引先の過去が分からないからだ。

    •登記簿は出てきても実態のない休眠会社や実態がどうもおかしいと思われるケースがあるので要注意。

    •会社なのに登記されていないこともある

    •商業登記簿は、法務局の管轄ごとに作成される。

    会社の登記簿の調べ方

    •履歴事項全部証明書を手がかりに  

    新規取引先の調査のような場合においては、取込詐欺のような被害に会わないためにも、特に過去の履歴を調査することが重要な意味をもつ

    •最後にある「登記記録に関する事項」の欄の記載  通常、この欄に記載のある「平成元年法務省令第15号附則第3項の規定により平成○年○月○日移記」というものは、バインダー式の登記簿からコンピュータによる商業登記簿に移行したという意味

    •本店移転に注意  過去に本店が置かれていた法務局に、閉鎖事項全部証明書を請求し、過去の履歴を調査する必要がある 

    •本店移転の記載がない場合に、過去の履歴を調べるには、閉鎖事項証明書を取り寄せる必要あり

    • 閉鎖登記用紙も調査する

    商号

    •商号が頻繁に変わっているようなら取込詐欺にかかわっている可能性あり。

    •商号が有名な企業の社名と似ている場合、実力以上に見せるために“虚構の信用”をデッチあげている可能性あり。

    •小規模企業なのに、社名がいわゆる大きすぎる場合も一応、注意する必要がある。俗にいう“名前負け”している会社もある。

    •創業1年なのに表面上は創業50年といった外観を形成する危ない会社もある。  

    商業登記簿の商号欄をみて、取引直前に商号変更されていたり、短期間に何度も商号変更している場合には要注意。 

    •商号変更は、事業内容の変更や時流にあわせて行う場合は必要ないが、取り込み詐欺や脱税の隠れみのに利用されるケースもある。

    •過去の不祥事や約束手形の不渡り記録などを隠すために、社名を変更するケースがある。意味のない変更や頻繁な変更がないかを確認する。

    所在地

    ・商号と同じく頻繁に変わっているようなら要注意。

    目的

    •登記の目的が、取引先の事業内容と合っているかを確認する。

    •登記の目的を一見しただけでは、何の会社か分からないほど、幅広い業務内容が登記されている場合は注意。

    取締役 

    •いっせいに入れ替わっている場合、激しい権力争いがあったか、赤字会社の買い取りの可能性あり。 

    •今まで商業登記簿にもあがっていなかった人物が突然就任したり、これまで全く表に出なかった取締役が二段、三段飛び越して就任したりしている場合、その理由のいかんによっては注意が必要。

    •登記簿をみて知った取締役が危ない人間・危ない経営者でないか要チェック。 会社の取締役を知ることによって、いざという時に、取締役個人の責任や法人格否認の法理で会社役員の責任を追及できるだけの担保余力があるかをあらかじめチェックすることが可能。

    •役員の構成におかしな点はないか。例えば、姓が同じ役員で構成されていれば、同族企業だと推測が付く。

    •同族企業で実務上の実権はご主人が握っているのに、登記上の代表取締役は奥さんである場合などがある

    →過去にご主人が会社をつぶして、個人も自己破産をしていて、役員になれなかった可能性あり。

    •代表取締役のみ自宅住所が登記事項になっている。不動産などのさしたる資産を持たない零細企業でも、代表取締役が自宅の不動産を所有していれば、そこから、資産背景が調査できる。

    •代表者の解任は異常事態 役員変更を長期に怠っている場合には注意

    資本金

    短期間での大規模な増資や小口の増資などが続いている場合、架空増資や株価操縦の懸念、経営陣や実質的支配者の変更の端緒として捉えることも重要です。

    会社状態区 

    民事再生、会社更正、破産等の登記がないか

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